2016年7月11日月曜日

『日記 ヨーロッパ浮わ気ドライブ』について

 今回は以前編集をお手伝いさせていただいた 『日記 ヨーロッパ浮わ気ドライブ 広告マンがクルマで走った1957年の欧州』 をご紹介します。




                 日記『ヨーロッパ浮わ気ドライブ 広告マンがクルマで走った1957年の欧州』(水馬義輝著)Kindle版




                                                      (書影はAmazonのサイトより)



 広島の広告代理店・みづま工房の創立者、水馬義輝氏が1957年7月から4カ月間、パリを拠点にヨーロッパ各国を車で旅した記録で、手書きの詳細な日々の記録と、水馬氏によって撮影された膨大な写真をもとに編集された書籍です。


  1957年と言えば、まだ日本人にとって渡欧が夢の世界の話だった時代。水馬氏はシトロエンとルノーのハンドルを自ら握り、9か国を走り抜け、3台のカメラを駆使して、広告マンの視点で当時のヨーロッパをフイルムに焼き付けていきます。


 訪れる国々でカルチャーショックを受けたり、自動車が故障したり、美術館で観た作品に心奪われたり。水馬氏の日記は読む人に氏の瑞々しい驚きや感動を伝えています。これも日毎に記録された走行距離や支出金額、地図や食事の内容などの克明な記録に基づくリアリティがあるからこそ。歴史的資料としても価値あるものだと思います。


 また、当時の写真はとても貴重なものばかり!パリの写真などはそのままヌーヴェル・ヴァーグの世界です。


 現在はKindle版のみ販売されていますのでご興味のある方はぜひお読みになってください。


 また、この電子書籍のスペシャルサイトhttp://www.eudriver.net/ もとても面白いのでぜひご覧ください! 


 さて、この本の編集で私がお手伝いさせていただいたのは、水馬氏の日々の記録用紙の内容をワープロソフトで書き起こす作業でした。4か月にわたる旅行ですので、当然ボリュームもあり、最初のころは先が見えず苦労しました。でも毎日、氏の記録をなぞっていると、まるで自分が氏に乗り移ったかのようになり、書き起こす風景が目に映り、車が故障すれば「またかよ、勘弁してくれよ!」と水馬氏も口走ったであろう言葉を漏らしてしまうほどのめり込んでいきました。一字一句、誤字まで正確に書き起こすように頼まれていたので、原稿は記録用紙の完全な復元物になりました。原稿を納品した時点では、どんな感じの本になるのか全く想像がつきませんでしたが、編集担当の恩田さんの手にかかり、氏の記録に忠実でありながら、とても読みやすく、ページを繰る手が止まらない素晴らしい1冊となって手元に届いたのです!

 編集担当の恩田さんとは、私が大学生の時からのお付き合いがあります。当時東京日仏学院の文芸翻訳のクラスを履修していたのですが、そのクラスでご一緒していた方に、フランス語の通訳を探していた恩田さんをご紹介いただき、食のスタイル雑誌「ARIgATT」(現在廃刊)のフランス関連記事のための翻訳や通訳をさせていただいていました。ミシュランガイドの編集長や超有名シャンパーニュ会社の社長など、大学生が会うことなどあり得ない方たちのインタビューを通訳させていただいたことを昨日のことのように思い出します。ライターをされていた恩田さんは、まだ学生の私をひとりのプロとして信用してくださり、チームを組んでくださいました。その後も食事に誘っていただいたり、フリーになるときにはいろいろとアドバイスをくださったり、とても頼りになる素敵な先輩なのです!(これからもよろしくお願いします!)


 日記と言えば、先日自分の学生時代について記事を書いたとき、やはり20年近く前の記憶はかなり曖昧になっていて、きちんとした記録をつけておくべきだったと後悔しました。今はSNSがある意味日記のような役目をしていますが、それは友人たちに公開する前提で書かれたものであり、生活の中で抱いたネガティブな感情や、他人との諍い、恥ずかしい失敗などについては語られず、後からさかのぼって読んでみると、おいしいものを食べて、旅行に行き、仕事や子育ても順調なハッピーな私しか見えてきません。しかし実際の生活と言えば、言うことを聞かない子供たちに手を焼き、昼食はカップ麺を啜ったり。きらきらと楽しかった思い出は脳によって勝手により一層美化され、記憶に定着し、ネガティブな思い出は次第に色褪せ、なかったことになっていく。そんな気がします。


 ハレの日もケの日も両方あっていい。

 日記をつけ始めようと思います。

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